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上がればまたまた大企業が儲かり、カネ余りはつづく。
だからまた、財テクというわけで、株価は急騰しつづけてき〈東京の株式市場は、うんざりするようなエアー・ポケット〔円高〕にもかかわらず、最近の一二ヵ月で、ドル・ベースで二倍に脹れ上がった。
これはNの五倍の膨張率である〉〈東京市場は六○年前〔一九二九年の世界恐慌前〕のアメリカ市場と酷似してきた。
それは、今日のわれわれ〔アメリカ人〕が、株価の不正操作、裏取引、バクチ、市場操作などと呼んでいる事態が横行していた時代だった。
唯一、日本でだけ、政府の施策として、株式の不正操作がおこなわれた〉〈この〔不正操作ができる〕秘密は、日本の株式市場があまりに大きくなり、N、Y、N、Yの四大証券会社に支配されている点にある。
四社の総計は、取引量の五○%以上、証券引受量の七五%にするが、そのさいも、発行会社とN証券などの証券会社との連繋で、その期間や期日に株価が高騰するような操作がおこなわれる。
証券会社としては、時価が高ければ高いほど手数料も上がり稼ぎがふえる。
また、N証券のようにシェアが高ければ高いほど、容易に株価操作ができる。
まさに、大企業天国台。
また、N請半ニッポンといえる。
アメリカの経済誌「フォーブス」の特集レポート「禅と日本式株価つりあげ手法」(八七年五月一八日号)は、核心を突いており興味深い。
同誌の表紙のイラストには、一見、日の丸に見える真っ赤な円が誌面いつぱいに描かれている。
よく見ると、それは限度いつぱいにふくらんだ風船で、その下には小さな日本人十数人が、手押しのポンプを無心に押して風船に空気を送り込んでいる。
つまり、風船は日本の株式市場であり、針でつつけばしぼんでしまうものだという痛烈な風刺画である。
レポートはつぎのように書不正操作で脹らんだ風船玉とN株も代金支払いを渋る。
を占める〉〈株式市場というよりは、まるでせかせかと騒々しい大型パチンコ店のようなものだ。
もちろん、アメリカの株式市場が完壁というのではないが、それから見れば、東京の株式市場は原始的だ〉このレポートが発表されてまもなく、日本の風船市場は、完壁でもないN市場の株価暴落という海の向うからの針につつかれて、少なからずしぼんだ。
同誌は世界に例のない〈政府の施策として〉の〈不正操作〉と風船株の例として、N株について書いている。
N株は行革による「民間活力」導入の国策推進株であり、相場を引っ張る「指標銘柄」ともいわれきた。
政府所有株の民間への放出は国家的事業としておこなわれ、八七年二月一○日からの第二次放出分一九五万株は、額面五万円の一株が一五五万円で売り出された。
だが、なにしろ大暴落の直後とあって、相場は不安定で放出価格を下回りかねない状況だった。
もし、そうなれば、予約していた大衆投資家そこで、Nをはじめ四大証券は、売り出し期間終了までに相場がくずれないように、「安定操作期間」と称して、毎日、輪番で市場のN株を買い支え、公然と株価操作をおこなった。
これについては財テク新聞「N新聞」(八七年一月一日付)でさえ、この「安定操作期間」の〈N買い支え〉が、ふたたび相場を崩壊させるとの〈懸念〉を書いた。
N株は、八七年一月の第一次放出(一九五万株)価格が一株二九万七○○円だったが、財テクブームのなかで超人気銘柄に仕立てられた。
みるみる一○○万円台を超え、さらに三○○万円台に突入し、四月二一日には三一八万円の最高値を記録した。
仮に一株の時価が三○○万円とすると、額面の実に六○倍であり、また、Nの発行株式総数一五六○万株は、時価総額四六兆八○○○億円という天文学的数字になる。
「フォーブス』のレポートも、この試算にもとづきつぎのように述べている。
〈Nは、総額三三○○億ドルというはでな市場価格をもつことになった。
これは、Nが、IBATT、エクソン、Z・エレクトリック、Z・モータースの全部を合わせた価値をもM、ATT、エクソ》っていることになる〉この超人気銘柄で儲けたのは、放出した政府・大蔵省とその売買額によって多額の手数料をせしめた大手証券だった。
とくに、N証券は、N株売り出しの引受け斡旋役の幹事証券のなかでも中心の主幹事となり、有形無形の御利益にあずかった。
たとえば、第一次放出のさいには、放出の九カ月前の八六年八月から、C&N(コミュニケーション。
アンド・ネットワーク)キャンペーンを実施。
当時の「社友」(八六年一二月号)も、「民営化で個人株主づくり」というタイトルで、その狂乱ぶりを報じている。
その後の『社友」(八七年二月号)が、営業第一線の支店代表を集めて「C&N・N座談会」をひらき、そのなかでつぎのようにいっている。
〈当社では、営業、総務、C&T〔女子社員のカウンター・サービス・レディとテレホン・サービス・レディ〕、ミディさんまでが一丸となって万全の体制下、「個人株主づくり」「顧客づくり」の絶好の機会に臨んだ〉〈今回のN株式売出しについてのN証券の対応は、まさに陸海空の三軍あげての総力戦といった大プロジェクトであった〉N証券の申し込み受付けは、約一五○万件に達したという。
岐阜支店の代表は、同支店の〈営業マンは一人一千件の目標〔ノルマ〕でやりました〉という。
成績を示すグラフを張り出してノルマを競争させ、支店トータルで四万四○○○件を受け付けた。
クジが当たるのはせいぜい約七○○○件で、〈クジに外れた約三万七千名のお客さまも、それぞれ最低百二十万円ずつの投資余力がおありなわけです〉と、顧客拡大が〈本当の産物かも知れません〉といっている。
N証券にとっては、N株放出による儲けもさることながら、大衆投資家の財布を狙った「個人株主づくり」の〈絶好の機会〉だった。
N株は、八九年度までになお第三次、第四次の放出が予定されているが、N証券の八七年一○月からの営業方針でも、N株を「主力商品」という位置付けで、「主力商品は時代を変える」と、その「波及効果」を重視。
「N株式の供給はかつてない巨大なマーケットを構築」するというスローガンで、「あらゆる顧客層拡大の最大のチャンス」としている。
だが、額面五万円の一株で、なぜ時価が二五○万円とか三○○万円もするのだろうか。
もし、時価が額面近くに下がったら、第二次放出でN株を手に入れた投資家は、一株当たり二五○万円前後もふんだくられた計算になる。
ただ政府と証券会社が仕掛けたブームに乗ったというだけで、理由もなく巨額の税金をむしり取られたのと同じことになる。
さすがに、「N新聞」(八七年一月一○日付)も、〈予想べースの株価収益率が二百六十九倍になっているN株をさらに買い上がるには、情報通信事業の将来性などに関する説得力ある材料がほしいとの声もある〉と書いている。
〈説得力ある材料〉もない、なんの根拠もない糸の切れた凧ならぬ風船となっている。
ここでいう〈株式収益率〉なるものも、風船相場につける無理算段の根拠にすぎない。
そもそも、その株式会社が発行した株式の額面の総額が、その会社の資本金であり、利益は出資額、つまり株式の額面額の大きさに応じて配当される。
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